
順番を待てない子、
我慢よりも「終わりが見える」ことで待てる
待つということは、やりたい行動を止め、ルールを覚え、終わりが来るまで踏ん張ることです。この時期の子どもには、我慢しなさいという言葉よりも、いつ終わるのかが目に見えることが必要です。
🗂 この記事で見ていくこと
- なぜこの時期の子どもにとって待つことが特に大変なのか
- 場面ごとに待ちの種類がどう違うのか
- 疲れていたりお腹が空いていると、なぜ特に崩れやすいのか
- 終わりが見える待ちをつくる具体的な手順
- さらに確認しておきたいサイン
親が実際につまずく場面
スーパーのレジの列で床に座り込んでしまい、エレベーターのボタンを子どもが押す前にドアが閉まると床に転がって泣き、遊び場の滑り台の前で前の子を押してしまう場面。一日に何度も繰り返されると、「この子はどうしてこんなに我慢ができないんだろう」と思えてきます。
けれど待つことは、意志だけでできる技術ではありません。やりたい行動を止め、ルールを覚え、いつ終わるのかを予測し、その間ずっと体を安全な場所に置いておくこと。これらが全部同時に必要になります。この時期の子どもの脳はこうした力が急速に育っている最中ですが、まだ安定して働いてはいません。我慢が足りないのではなく、今まさに学んでいる最中なのです。
まず一行でまとめると
待つことが苦手な子に必要なのは、もっと強く我慢しなさいという言葉ではありません。いつ終わるのかを目に見えるかたちにして、待っている間に手がやることを決めてあげると、ぐっと踏ん張れるようになります。
🔍 なぜこの時期に待つことが特に大変なのか?
待つことには、少なくとも四つのことが同時に必要です。やりたい行動を止めること、ルールを覚えること、次に来る結果を予測すること、その間ずっと感情を低く保つこと。研究者たちはこうした力をまとめて実行機能と呼びますが、この時期に急速に育つ一方で、疲れていたり欲しいものが目の前にあると簡単に揺らいでしまいます(Garon, Bryson, & Smith, 2008)。
欲しいものが目の前にあると、待つことはさらに難しくなります。おやつがテーブルの上に置かれたまま「ちょっとだけ待って」と言われると、子どもにとってはそれを見ながら食べないでいることがずっと大変です。終わりがわからない「ちょっとだけ」も同じです。いつ終わるかわからない待ちは大人でもつらいものです。子どもにとっては、なおさらです。
🗺 場面ごとに待ちは違います
待ちの四つの場面
どんな場面かによって、子どもに必要な手助けが変わります。
- 短く、終わりが見える待ちエレベーターのドアが開いたり、親が水を注ぐ数秒のように、終わりが近い場面です。指二本、歌のワンフレーズのような小さな終わりの手がかりを添えるだけで、ぐっと踏ん張りやすくなります。
- 順番を待つ滑り台、おもちゃ、きょうだいの順番のように、ほかの人が終わるまで待たなければなりません。前の人が見えて、自分の番が来るとわかることで踏ん張れます。順番カードや床の印が役に立ちます。
- 終わりがわかりにくい待ちレストランの料理や病院の診察のように、いつ終わるか予測しにくい状況です。この状況では、待つ練習よりも手がやることを与えるほうが現実的です。
- 危険な場面での待ち道路、駐車場、エスカレーター、水辺では、待つ練習よりも安全が先です。この状況で逃げ出したり走ったりする行動が繰り返されるなら、待ちの訓練ではなく別のアプローチが必要です。
📉 疲れていたりお腹が空いていると、なぜ余計に崩れるのか?
子どもがすでに知っているルールでも、強い感情の状況では使うのが難しくなります。お腹が空いていたり眠かったり、保育園のお迎え直後や長く待ったあとには、待つ力が大きく下がります。ふだんは踏ん張れる30秒も、この時間帯には5秒も大変なことがあります。
すぐ直前の場面も見ておく必要があります。急な活動の終了、大きな音、知らない場所、画面の終了のように刺激が重なった直後は、待つことがさらに難しくなります。こういう日は目標を下げて、待ち時間を短くするほうが、かえって成功を積み重ねる方法になります。
✅ 終わりが見える待ちをつくる手順
まず気持ちを認めます。
すぐにルールを言うと、子どもには聞き取りにくくなります。望んでいたことを先にわかってあげると、次の言葉が入っていきます。
声かけの例 「すぐ乗りたかったんだね。」「今ほしかったんだね。」
いつ終わるのかを目に見えるようにします。
抽象的な「ちょっとだけ」よりも、指、歌、砂時計のように子どもが見られる手がかりがあると踏ん張れます。
この時期ごとの現実的な目標 歩き始めたばかりの子は5〜15秒、もう少し大きい子は10〜30秒、言葉がぐんと増えた子は歌一曲や砂時計一回が、現実的な待ちの目標です。
声かけの例 「指三本、待ってね。」「歌が終わったらあなたの番。」「前の人が一人終わったら私たちの番。」
待っている間に手がやることを決めてあげます。
空いた時間は感情を大きくします。体がやる行動があると、ぐっと踏ん張りやすくなります。欲しいものはしばらく視界から減らすか、手の届かない場所に置きます。
例 コップを持つ、順番カードを握る、シールを持っている、床の印を踏んで立つ、親の手をつなぐ
約束した終わりの手がかりが来たら、すぐに実行します。
待つことが予測できるルールになるには、約束が守られなければなりません。終わりの手がかりが来たのに「もう少しだけ」を繰り返すと、子どもは次に踏ん張らなくなります。
注意 守れない終わりの手がかりを最初から設定しません。5分待てない状況なら、最初からもっと短い終わりの手がかりで始めます。
待てた行動をすぐに言葉にして伝えます。
長いほめ言葉よりも、子どもがした行動に名前をつけて言ってあげることが、次の待ちをつくります。
声かけの例 「カードを持って待てたね。」「席に立って待てたね。」「手が待てたね。」
こうすると、かえって難しくなります
❓ よく迷う質問
親がよく聞くこと
- わざとやっているの?そう決めつける前に、直前の状況を見てみます。疲れ、空腹、急な活動の終了、大きな刺激が重なると、ふだんよりずっと崩れやすくなります。意志ではなく、その瞬間の状態のほうが決定的です。
- 説明すれば伝わる?子どもの体や感情がすでに大きくなった瞬間には、長い説明はあまり入っていきません。短い言葉、手ぶり、次の行動を一つ示すほうが役に立ちます。落ち着いたあと30秒以内に「こうやって待てたね」と短く名前をつけてあげることが、次につながります。
- 待つ練習はいつから?すでに崩れた場面ではなく、穏やかな家の中で10秒の成功から積み重ねます。成功が繰り返されたら5〜10秒ずつだけ増やします。最初から何分も踏ん張らせると、失敗ばかりが積み重なります。
- 最初の数日はかえってひどくなることもあると聞くけれどこれまで泣けばすぐ手に入っていたパターンが変わるとき、最初は行動がより大きくなることがあります。この時期を乗り越えるには、待ち時間をさらに短くして成功をつくり、泣くことよりもカードを持つ、席に立っているといった待ちの行動に反応します。
🔎 さらに確認しておきたいサイン
待つのが苦手なのは、この時期によく見られる姿です。ただし、下のサインが一緒に見られるなら、単なる待つ練習よりも、もっと広く見ていく必要があります。
こんなサインが一緒に見られるなら
待ちの場面だけでなく、日常全般で繰り返されるなら、専門家への相談を検討します。
- 安全を脅かす行動待つ場面で車道や階段に走り出したり、頭を打ちつけたり、物を繰り返し投げたりします。
- いろいろな場所で毎回繰り返す家、保育園、外出先のすべてで、ほぼ毎回、長く強く爆発します。
- 落ち着くまでの時間が長すぎる落ち着くまで10〜15分以上かかり、一日に何度も繰り返されます。
- 数週間たっても変化がない終わりの手がかり、待ちの手仕事、短い成功の仕組みを根気よく使っても、頻度と強さが減りません。
📝 3日だけ書いてみること
3日間、三つだけ記録します
- いつ始まったのかお迎え直後、食事の前、寝る前のように、時間が繰り返されるかを見ます。
- 直前に何があったのか画面の終了、長い外出、知らない場所、大きな音、空腹のように、重なった刺激があったかを書きます。
- 何が役に立ったのか抱っこ、水を飲む、静かな空間、短い待ちの成功のように、子どもが落ち着いた方法を残します。
待つ練習の目標は、子どもをおとなしくさせることではありません。終わりが見える短い待ちを成功する経験を積み重ねることです。同じ場面で一つずつ変えていくうちに、子どもも待つことが予測できるルールだと学んでいきます。